ひとこまストーリー

Short stories

第3回 最高の褒め言葉

ひとこまストーリーは、実際にあった、くすっと笑える、心温まるエピソードなどを紹介するコーナーです。
第3話は、最後にご家族からいただいた感謝の言葉が今でも心に残り、介護という仕事を今後も続けていこうと思わせてくれた、素敵なご家族との出会いのお話です。(老健ほの香 山前)

 今から14年前、私が特養から小規模多機能「燈」へ異動して間もない頃に、Iさんという90代男性の方と出会いました。Iさんは独り暮らしで、隣に娘さん夫婦が住んでいました。娘さん夫婦は毎日食事を届けるなど、献身的に介護をしていましたが、娘さんは体があまり丈夫ではなかったため、Iさんの事を考え、小規模多機能「燈」を利用することになりました。利用開始当初、Iさんは通いのお誘いには応じてくれるものの、会話が途切れるとすぐに帰ろうとします。Iさんをなるべく飽きさせないようにマンツーマンで関わっていきました。小規模多機能は、本人だけでなく家族も一緒にどう支えるかがとても大切です。介護疲れを感じているご家族が休む時間をどのように作るか、Iさんの食事が進まないときにはどうするか等、他の職員と一緒に毎日のように考え、支援していきました。Iさんは燈に徐々に馴染み、夜も泊まれるようになりましたが、心身の低下も見られるようになり、1年後に併設しているサテライト特養「燈」に入所することになりました。その後持病が悪化し、入所してから数ヵ月後にお亡くなりになりました。

 私は葬儀に参列し、娘さん夫婦に「大変お世話になりました」とお礼をすると、娘さんから「うちの父は山前さんに出会えてよかったです。こちらこそ、本当にありがとうございました。」と感謝の言葉をいただきました。私はIさんとのこれまでのエピソードが一気に思い出され、涙が溢れてきました。Iさんは、小規模多機能サービスの経験がほとんどなかった私にとって、自宅に戻りたいと思っているご本人だけでなく、ご家族も一緒に支える事の難しさなど、多くのことを教えてくれました。今の私があるのもIさんのおかげであり、決して忘れることはありません。「あなたに会えてよかった」と言うご家族からの言葉は、介護をする者にとって『最高の褒め言葉』であり、改めてこの仕事をやっていてよかったと思わせてくれた、素敵なご家族でした。